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拙作では主に、RPGではオーソドックスな、ターン制のコマンド戦闘を採用しています。

選択理由としては、コマンド戦闘がツクール標準の機能で作りやすかったのもありますが、自分自身このシステムが大好きだから、と言うのが最大の理由になります。

時代遅れだと言う方もいらっしゃいますが、現在持ちうる装備やスキル、メンバーの選択肢を吟味し、勝利までのルートを組み上げていくこのルールは、とてもやりがいがあると感じています。

また、自分のように手先が不器用な人間な場合、一定以上の器用さを要求するアクションゲームやリアルタイムのコマンド戦闘よりも、とっつきやすいと言うのもあります。

そんなターン制の戦闘ですが、実はRPG以外でも、このシステムを用いている比較的メジャーなゲームが存在します。

それこそが、トレーディングカードゲームです。

自分はゲーム制作以外にも、対戦型のトレーディングカードゲーム(以降、略してTCG)を趣味としております。

色々なゲームを広く浅く行っていますが、最近ではMtG(マジック・ザ・ギャザリング)にのめり込んでいます。

どのくらいのめり込んでいるかと言えば、一枚3万円のカードを躊躇なく買い、総額十数万円のデッキを組むぐらいになります。

(ただし、これでもまだ「安価デッキ」を使っている方で、「レガシー」においては可能な限り安く仕上げても20万や30万を越えるデッキは珍しくありません)

そんなトレーディングカードゲームですが、ターン制である点では、RPGの戦闘と似通った所があります。

カードを使う点で異なっている場所も多いですが、RPGの戦闘を作る上でも参考になる点や、逆輸入できる点が多く存在していると私は考えました。

実際に「捨てるしかない」や「すごい南」の制作では、TCGをやっていた事で学んだ事を多く活かす事が出来ました。

当記事では、そのあたりについて軽くまとめてみようと思います。

TCG未経験者でも分かるよう注意して書きますが、分かりにくい事があったら指摘して頂けるとありがたいです。

TCGについて説明しているとキリがないので、今回は自分が参考にした事についてのみ書いていきます。

フェイズの流れ

TCGでは、各プレイヤーのターンが、「フェイズ」と言う単位で区切られて管理されています。

MtGの場合を例にすると、ターン開始時の処理を行う「開始フェイズ」、様々なカードを手札から使用する「メインフェイズ」、場に繰り出したクリーチャー(RPGで言えば召喚獣やパーティメンバーのようなもの)で相手を攻める「戦闘フェイズ」、戦闘後にもう一回行われる二回目の「メインフェイズ」、そして終了時の処理を行う「終了フェイズ」からターンが構成されています。

普段我々は気にしていない事ですが、RPGの戦闘もよくよく考えてみれば「フェイズ」に切り分けて考える事が出来ます。

例えば「捨てるしかない」のPlayer Turnをフェイズに分けるとすると、APの回復とステータス表示が行われる「開始フェイズ」、各キャラクターの行動を選択する「コマンド選択フェイズ」、キャラクターがスキルやアイテムを使い行動する「行動フェイズ」、出血ダメージ等を処理し相手ターンに移る「終了フェイズ」のようになるでしょう。

TCGでは自分のターンと相手のターンは独立していますが、RPGのコマンド戦闘では入り混じっている事が多いのが特徴的でしょうか。

何にせよ、フェイズの概念を頭においておくと、オリジナル要素を導入したターン制戦闘を構築する上で、様々な要素を整理しやすくなるので便利です。

クロックの概念

多くのTCGは、対戦しているプレイヤー自身のライフポイントに相当する数値があります。

大抵の場合、RPGで言うキャラクターや召喚獣に相当するカード(さっき例に出した「クリーチャー」の事です。この記事では以降「モンスター」と呼びます)を場に出し、それで相手プレイヤーを攻撃し、致死量のダメージを与え敗北させる事が、カードゲームの勝利条件となります。

仮に、初期ライフポイントが20のゲームがあるとしましょう。

攻撃力5のモンスターを場に出した場合、4回相手を攻撃すればライフを0に追いやり、勝利できます。

通常TCGでは1ターンに1回まで攻撃できるので、4ターン後に勝利する見込みが立った事になります。

この時、ゲーム終了までの時計の針を進めると言う意味合いで、この攻撃手段やダメージを量を「クロック」と呼んだりします。

上記の状況では、4ターンの「クロック」があるだとか、5点の「クロック」だとか言ったりします。

この「クロック」の概念は重要で、もし攻撃力が5ではなく4であれば猶予ターンは4ターンから5ターンにまで伸びます。

逆に攻撃力5から6に伸びても猶予ターンは4ターンのままで変化せず、状況にもよりますが「攻撃力5は4と比べて明確なメリットがあるが、攻撃力が6あってもオーバーキルなので無意味だ」と言える事になります。

相手の場のモンスターを破壊等して除去する場合、この「クロック」がどう変化するかを鑑みて、本当に倒すべきかどうか判断して行く事になるのです。

もし3ターン後に超強力なカードを出して直ちにゲームに勝てる自信があるのであれば、相手の場にある攻撃力6のモンスターを無視してしまっても、4回攻撃されて20ダメージを受けるより前に試合が終わるので、放置しても構いません。

しかし攻撃力7のモンスターがいるのであれば、3ターン後には致命傷を負ってしまうので、何としてでもそのモンスターを撃破しなければなりません。

この概念は、RPGの戦闘を作る上でも重要です。

その時点のレベルや装備、スキルで用意できる攻撃手段から「クロック」を見積もる事で、敵を倒すのに何ターン掛かるのか計算する事が出来ます。

また、敵の攻撃手段によって、どれだけ戦闘不能や状態異常、回復魔法の使用によって「クロック」が削られてしまうかも見ておくべきでしょうか。

そう言った事を加味し、雑魚戦のターン数を1~2ターン、多くて3ターンぐらい、普通のボスは5~10ターン、重要な決戦は更に長く、と言った塩梅に設定して行けば、丁度良い量のHPを設定できると思います。

また、この概念を考えていく上で、RPGならではの問題が見えてきます。

TCGでクロックが「不十分」だった場合、それは「対戦相手に猶予を与え過ぎてしまい、逆転されてしまう」と言う形で敗北し、ひとまずの決着が付きます。

しかし、RPGの戦闘ではクロックが不十分でも、それで直ちに負ける事はありません。

ただ戦闘で経過するターンだけが伸びていく、それだけです。

ある意味では不十分な備えでも頑張れば勝てるメリットでもあるのですが、プレイヤー視点では「勝てはしたけど、無駄にターンが長引いて退屈な戦闘だった」と感じる事になり、ゲームをつまらないものだと感じさせてしまう事になります。

もし装備やスキルの構成次第では充分なクロックを確保出来るようになっていたとしても、それに気づかなかったプレイヤーは今後も「退屈な」戦法を選び続け、ゲームを楽しめないままで居続けるのです。

TCGと違って「負けない」事が、却ってプレイヤーを苦しめる事に繋がるのです。

これを解消するには、例え雑魚であっても「ターンが掛かり過ぎた場合、自爆や逃走、全体即死でバトルを無理矢理終わらせる」必要があります。

初代MOTHERでは戦闘が256ターンまで長引くと強制終了する仕様がありましたが、これをもっと短くするのも良いかも知れません。

「捨てるしかない」のAP制は、敵側の攻撃手段をターン経過に伴い強化する事でクロック不足をそのまま不利に繋げる為に用意したものでもあったのですが、全ての敵がAPを貯め続ける戦略を取る訳ではなかったので、その辺りの調整はもっとやり込む余地があったようにも思います。

カラーパイ

TCGにも、属性の概念を採用したものが多くあります。

しかし、TCGの属性はRPGのそれとは毛色が大きく異なっています。

多くのTCGは、何らかの形で「属性は1種類ならノーリスク、複数使いたい場合は量に応じて相応のリスクが掛かる」ように設計されています。

例外があるにはありますが、大抵プレイヤーは属性に合わせてデッキを構築していく事になります。

属性毎にやれる事が異なってきますが、自分のデッキに合わない属性の得意分野については、出来ないと割り切って他の手段で埋め合わせなければなりません。

……ここまでなら、RPGと大差無いでしょう。

最大の違いは、殆どの場合「属性相性の概念が存在しない」事にあります。

ゲームを原作とするポケモンでは弱点や抵抗力の要素があり、他のゲームでも特定の属性相手に有効なカードが存在したりしますが、それらは全体の中では少数派です。

RPGの属性は相手の弱点を突く為に使われる事が多いですが、カードゲームだとそうではないのです。
先述の通り、各属性毎に得意な分野(や不利な分野)があり、時期によっては特定の属性に強力なカードが偏っていたりします。

プレイヤーは相対的な「相性」よりはむしろ、絶対値的な「長所」を選択の指標とする事になります。

色毎の役割は、MtGにおいて「カラーパイ」と呼ばれており、開発者からは強く意識されています。

色の役割が偏ったり壊れたりすると選択の楽しみが失われてしまい、ゲーム自体の魅力を大いに損なうとされているのです。

このカラーパイがしっかりと機能していれば、「ゴーレムは水に弱いから水属性にしよう」と言うような受動的・消極的な原理よりも、「水属性は全体攻撃や回復力に優れ魅力的だから選ぼう」と言うような自立的・積極的な原理に基づいた行動が促されます。

私としては、後者の方がやっていて楽しいと思うのです。

すごい南では属性毎の個性を重視し、可能な限り汎用的なスキルを廃して属性毎にバラバラの傾向のスキルを覚えるようにしてみましたが、つまりはそう言う事です。

(尤も、すごい南は属性相性の影響が強く受動的な要請が大きかったので、その辺もう少し控え目にした方が良かった気もしますが)

テンポ要素

最初のTCGであるMtGには「マナ」の仕組みがあります。

RPGに例えて言えば、「MP最大値は0、毎ターンMPが全回復し、最大値が1ずつ上昇する」と言うような感じで、ターンが進む毎により強力な魔法が使えるようになり、ゲームがどんどん盛り上がっていきます。

また、MPそのものに属性があり、その属性に対応するカードしか使用出来ないので、MPを発生させる手段と使いたいカードを調整し、必要な属性のMPを常に供給できるよう注意していく必要があります。

この仕組は後発の多くのTCGに取り入れられており、そうでないTCGにおいても、何らかの形で「ターンが進む毎に選択肢が増えるようになる要素」が実装されております。

RPGのコマンド戦闘では、そう言うものが存在しない場合が多々あります。

通常のMP制では、ターンが進む毎にMPや所持アイテムが減っていき、やれる事がどんどん減っていきます。

これはこれでリソース管理の重要性を推し出した作品を作れるので悪くないのですが、一個一個の戦闘に着目した視点では、尻すぼみのゲームの繰り返しになってしまいます。

例えば捨てるしかないの「毎ターン増えるAP」と「APを消費しないが、量は要求するスキル」のような、段々と選択肢を増やしていく要素は積極的に採用していって良いのではないかと思います。

以上のように、ターン制ゲームの同士としてTCGから輸入できそうな要素は多いので、興味が無い方もターン制ゲームを作りたいのであれば、ある程度調べてみても良いのではないかと思います。

また、今回はTCGのルール面に着目していますが、個々のカードの性質に基づいて考えれば、もっと色々な面白い要素を見出だせます。

すごい南でやった要素で言えば、「エサの要求」のような「対象を自分ではなく相手が決めるスキル」は、TCGにおいて「布告」と呼ばれるタイプのカードを参考にしたものになります。

その辺を語ると長くなりますので、今回はこの辺でお開きとします。

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