ぼとるつぼ
君の全全全知からエムラ
設定厨とは、ピクシブ百科事典いわく
>設定厨とはオリジナルの世界観やオリキャラの設定をひたすら練ることに取り憑かれてしまった人のことを(侮辱的に)表す、
>あるいは自分がそうであると自虐的に名乗る呼称である。
>中二病と併発することも多い。
設定厨の一人である事を自認する自分が、どう言う所に設定を捩じ込もうとするかを紹介するのがこの記事の趣旨になります。
今回は、キャラクターや土地などの名称について記述します。
名前の設定方針パターン
恐らくこの記事を読んでいる殆どの方には名前ががあると思いますが、それをつけた何者かは何らかの意図をもって名前を決めたはずです。
例えば私の本名は、自分が生まれた頃の本の登場人物から漢字を取って名付けられています。
あなたがキャラクターや土地、あるいは技なんかに名前を付ける場合にも、そこになにか意味があるはずです。
もしかしたら特に考えず田中太郎だとかファイアボールだとかをつける人もいるかも知れませんが、設定厨の自分としては言語化可能な目的意識を持たせる方がより美しく気持いいように感じます。
そのような名前付けの意図には、いくつかの種類があります。
大別したものが以下です。
1.プレイヤーへの配慮としてのネーミング
先程例に出した「ファイアボール」と言う技名を聞いて、多くの人はそれがどう言う技なのか、既にイメージできていると思います。
魔法なのか火炎放射器によるものなのかはわかりませんが、とにかく火の玉を出してぶつける技だと考えた事でしょう。
このように本やゲームを見ているプレイヤーへの理解を助ける為、世界観を無視した名前をつけるような場合があります。
明らかに金髪の白人男性っぽいキャラクターが漢字の技名の剣技をぶっ放す事があれば、それもその一種でしょう。
なにも技名に限ったことではなく、例えば炎使いのキャラクターの名前を「スカーレット」だとか「火中 焦郎」「ホノーオ・ハキマクール」にするのも同様の意図を持っています。
また、別軸の配慮として、デスノートの主人公のように犯罪に加担するキャラクター名を通常の日本人にはありえないような名前にし、どこかの誰かとダブっていじめの対象にならないように配慮することもあります。
夜の産業で用いられる「源氏名」も同様に誰かとの重複を避ける為に用いられるようで、折角そう言う店に来たのに相手の名前が自分の実母とかぶっていてげんなりしたみたいな悲劇を防止していると言います。
もし魅力的なヒロインを出したいと考えるのであれば、なるべく日本人女性には少なそうな名前にしておくと、そう言った不慮の事故を抑えられるのでベターです。
2.名前としての気持ちよさを重視したネーミング
主人公の名前は、ゲームの中で何度も出てくる事でしょう。
であればそれは変に覚えにくかったり笑いを取るものだったりするより、こう5・7・5のように耳にしっくり来るもののほうが良いと言う考えもあります。
例えばヴァーチャルなアイドル業の諸々のように「{3音分の漢字}{2音分のひらがな、またはカタカナ}」とするとキャッチーで可愛らしくなりやすいです(特にヒロインの場合に効果が大きい?)
それが本やゲームであれば名前と苗字を繋げて読む機会はそんなになさそうなので、苗字と名前のどっちか片方、その世界でよく呼ばれる方の語感を重視するのがベターかなあと自分は感じています。
ちなみに気持ちよさには語感だけでなく、整合性や隠されたフレーバー面での気持ちよさもあります。
1と若干重複していますが、例えば人名「ファイア」みたいな直接的なわかりやすさのあるものを避けエスペラント語の「フラーモ」等にして、他の関係性の深いキャラクターの名前を同様にエスペラント語の氷、雷、風で「グラシオ、トンドロ、ヴェント」にする事で気持ちよさが生まれてきます(プレイしてる側には伝わりにくいポイントですが)
また、名称を同じ国の言葉に由来するものに揃えると、それだけで音に統一感が生まれ、キャラクターが複数出てきた時に違和感のようなものが生じにくくなります。
3.世界観に配慮したネーミング
あなたの作るゲームが北欧ファンタジー風であれば、キャラクターの名前は通常北欧風の名前の方がしっくり来ます。
ファンタジー世界に作者の趣味で日本人風キャラクターが捩じ込まれる場合でも、タナカだとかタローだとかみたいにカタカナにして「東から来た外国人だよ」みたいな形にされる事が結構あります。
登場するキャラクターの国籍や文化を踏まえ、それらの違いが現れるようなネーミングを意識してみましょう。
あるいはイチから完全な世界観を作りたいと思うのであれば、現実を下敷きにしつつも「この地域の人の名前はこう言う傾向がある」だとか「この地域は血統を重視するから日本語みたいに名前より先に苗字が来る」みたいに細かいルーリングを考えてみるのもいいでしょう。
4.名付け親を想定したネーミング
個人的に、真の設定厨はこれを重視するべきだと考えています。
当たり前ですが、名前があると言う事はどこかに名付けた誰かがいると言う事になります。
これを想定する事で目に見えないキャラクターが物語に加わり、より芳醇なフレーバーに満ちた人間関係を描けるようになることでしょう(細かすぎてプレイヤーに伝わらなくても知りません)
例えば日本人の名前にあからさまなDQNネームもといキラキラネームをつける事で、あまりまともとは言いづらい親に育てられたんだ感を出すのは手法として楽な方なので、ちょっと虐待や甘やかしされたキャラクターを出したい人は意識してみる事をおすすめします。
地名であっても、漢字に「氵(さんずい)」が含まれる土地は水害のリスクが高いから避けるべきだなんて話もありますし、十分に歴史の重みを乗せる余地があります。
複合技
上記の諸々は、うまいこと複合させる事ができます。
そしてそれは、必ずしもパズルのようなシビアさを持ち合わせているわけではありません。
例えば、まず1と2を鑑みて、語感がよくプレイヤーにも意味が伝わりやすい「イラネーゼ」と言う人名を捻り出したとしましょう。
そして、これを3で用いる世界観の下敷きにします。
例えば末尾が「ネーゼ」で終わる名前は貴族の長女みたいな設定を捻り出して、他に「クダンネーゼ」みたいな名前のキャラクターも出すのです。
物語を作っていく内に必要性が生まれれば、4の手法も駆使します。
例えば本当はスラム街出身ながら執念によって上流階級に這い上がった少女「タリン」が、自分自身で新たな名前「タリネーゼ」をつけたみたいなエピソードを出す事ができるでしょう。
なんにせよ覚えやすいようにね
名前には歴史があり、伝統的な名前や地名には昔の人間の意図が込められています。
しかし我々は、それをほとんど意識せずに記号として消費する事が多いです。
なんかもったいない気もしますが、結局名前とは対象を識別する為のもの、それに尽きます。
自分は設定厨なので色々と弄くり回して遊び尽くす事に強烈な快楽を得ますが、それに終止して名前としての役割を果たせないようでは本末転倒です。
みなさんもそのあたりを考慮して、自身にとって心地よい名前を探していきましょう。
余談ですが(あるいは本題以上に重要な話ですが)名前の評価値として「エゴサビリティ」と言うものが存在します。
もしあなたが作った作品の評判を調べたい時、その作品や登場人物の名前が他の諸々と差別化されていると、検索して見つけ出す事が大幅に楽になります。
悪い例をあげると拙作「捨てるしかない」は一般的に用いる日本語がそのままゲームタイトルになっているせいで、ネット上からプレイヤーの感想を吸い上げる時に無駄な労力を大きく要求されていしまいます。
語と語の組み合わせである「すごい南」は若干マシですが、それでも「南って名前の人」「南の方の土地だとか天気だとか」の情報に紛れ込んで見つけ出すのが面倒くさいです。
逆にキモリバヤシやカスタサイドみたいな名前はあまり他の何かと重複しておらず。見つけ出しやすい状態にあります。
もしあなたが自分の作品へのフィードバックを得て続編の糧にしたいと考えているのであれば、この辺りは結構真剣に考慮した方がいいでしょう。