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この前、Twitterでフリーゲーム好きの人たちの会話を見ていると、「状態異常」について話題になっていました。

あまりしっかり見ていなかったので、ちゃんとした話の流れは分かっていないのですが、「ボスに効かない状態異常に意味があるのか」が主な論点になっていたようです。

本記事では、拙作の状態異常の扱いも踏まえて、その辺りの自分なりの考えを書いてみたいと思います。

そもそも状態異常は何故あるのか

敵にダメージを与えて倒す、自分がダメージを食らって死ぬ、MPを使って強い技や特殊なスキルを使う。

RPGの戦闘の基本要素は、以上で大体言い終えています。

状態異常がボスに効かないゲームが存在する以上、状態異常は無くてもゲームが成立するような、カップ焼きそばにおまけでついてくるマヨネーズにあたる存在になります。

無ければないで良いものを敢えて追加するのは、どのような理由があっての事なのでしょうか。

色々理由があるとは思いますが、個人的に重視しているポイントを挙げてみます。

まずは、複雑さを高める面です。

状態異常の無いゲームでは、相手に与えるべき被害はHPのみ、回復するべきポイントはHPのみで、考える事がかなりシンプル、悪く言えば単調になります。

(MPにダメージを与えられたり、MPを大量に回復するアイテムがある場合もありますが)

その場合、装備は適当に攻撃力や防御力が高いものを買えばそれで100点、後は余った金でHP回復アイテムだけ買っておけば何も悩む事がありません。

そこに状態異常が加わると、装備として状態異常耐性の強いものが選択肢に入ってくるようになり、消費型アイテムもHP回復と異常回復をちょうどいいバランスで買わなければならなくなるので、一気に考える事が増えていきます。

攻撃スキルも、「序盤に覚えた、低威力だが状態異常を与えるスキル」と「中盤に覚えた、より威力が高く別の異常を与えるスキル」がある場合、状態異常が無いゲームなら前者が下位互換としてお役御免になる所が、異常のお陰で状況次第では前者も活躍するケースがあり得ると言うのも面白いポイントです。

また、異常耐性装備と異常回復アイテムが両方ある場合、装備のスロットを使ってでも「予防」するか、あるいは戦闘中のターンを使ってでも後から「回復」するか、以上2つのどちらのプランが適切なのか、また考えなければなりません。

また、HPが減ったなら回復しなければ死んでしまいますが、状態異常はその性質によっては、「無視して回復せず戦う」「異常に掛からない事を祈る」「さっさと自然回復する事に賭ける」と言った選択肢を取りうる場合があります。

自分が状態異常を掛ける側に回っても、「わざわざ異常に掛けるより殴り倒した方が早くないか?」「(成功率が100%かわからないなら)失敗のリスクを承知してまで使う意味があるか?」「どの異常を掛けるのが一番効果的か?」等の悩むポイントが現れてきます。

戦闘前の事前準備だけでなく、いざ戦闘が始まった後でもやれる事が増えるのは、大きな魅力だと考えます。

続いて、フレーバー(雰囲気づけ)の面があります。

例えば毒は、有毒生物のモンスターや暗殺用のナイフの個性を、わかりやすく立てる事が出来ます。

どうしてもHPダメージだけでは単なる攻撃しか演出出来ないので、相手を眠らせるだとか、石にさせるだとかの特殊な能力を表現する場合、状態異常を用いた方が効果的になります。

特殊な状態異常を用いる強敵を、誰かから貰った曰くある防具によって凌ぐと言うのもストーリー上の演出として効果的でしょう。

ストーリー中で毒蛇に噛まれたキャラクターが、アイテムでは回復できない特殊な毒状態になり、森の魔女に薬を貰いに行かなければならなくなる、と言うようなストーリー展開を作る事もできます。

後は、毒を回復する解毒剤は10円、石化を回復する聖者の血は10000円、と言った感じで回復アイテムの値段や回復魔法の消費MPに格差を付ける事で、毒を使う敵と石化を使う敵の間の「格の違い」を示す事が出来るのも面白いです。

そもそも何故ボスに状態異常が効いてはいけないのか

ボスに状態異常が効かないゲームがあるのは、何故なのでしょうか。

分かりやすいのは、「簡単になり過ぎるから」でしょうか。

ゲームにも寄りますが、大抵状態異常は味方側が掛かった時の被害が適正なように作られます。

例えば毒であれば、味方が掛かった場合であれば20%ぐらいはダメージがないと、回復を要するほど目に見えた被害が発生しません。

(単なる雰囲気付けけの為の毒であれば、あるいは回復が困難なゲーム性であれば、それ以下でも問題ありませんが)

これをボス相手にも適用してしまうと、毒を掛けてから5ターン程度防御コマンドを繰り返すだけで勝ててしまいます。

それはあまりよろしくないので、ボスには効かなくしてしまおうと言う事になるのでしょうか。

もちろん毒に限った事ではなく、能力異常以上や行動不能異常も似たような問題を孕んでいます。

また、状態異常に掛けても簡単にならないように作った事で、「状態異常前提のゲームと化す」と言う問題もあります。

例えば攻撃力半減異常が有効なボスがいて、その攻撃力を半減された場合を考慮して設計したとしましょう。

対応する異常を付与するスキルを用意できれば問題ないのですが、もしそれを覚えないまま挑んでしまった場合、異常で下げられる前提の超パワーに真正面から挑む必要に迫られ、プレイヤーによってはそこで詰んでしまいます。

また、どうせ状態異常を使うしかないのであれば、選択肢が無いと言う点では状態異常が効かない場合と何も変わらないし、ならば最初から状態異常が効かない方がシンプルな分マシ、とも考えられてしまいます。

ボスに効いても良い異常とは

さっきはボスに異常が効く場合の問題点を挙げましたが、現実にはボスにも異常が有効なゲームは存在し、それらの中には適切なゲームバランスを保っているものも多く存在します。

と言う訳で、どうすれば上述の問題を回避できるのか挙げてみましょう。

まずは、「異常の性能を異常毎に固定ではなく、味方側のステータスから導き出させる」と言うのがあります。

例えば、毒であれば一律HPのXX%にするのをやめて、スキルのレベルがあるならスキルレベル、器用さ的な数値があるなら器用さに応じ威力が上がる、定数ダメージにします。

この形であれば、敵に与えられる毒ダメージは味方の現時点の強さに応じた値になるので、強過ぎてしまう事がありませんし、逆に敵がこちらに使う場合でも、敵のステータスの調整次第で良い塩梅の威力の毒に仕上げる事ができます。
これを、使用者だけでなく受ける側のステータスにも影響させるようにすることで、敵が雑魚かボスかによって毒の威力を調整する事ができます。

毒以外の異常も同様で、能力低下系についても同じように出来ますが、行動不能系に関しては発生率以外の部分で調整できる箇所が少ないので、他のタイプより調整が難しいかも知れません。

また、自他のステータス中の数値の数が増えるので、ゲームを思いの外複雑にしてしまう難点もあります。

その辺りをうまく設定し尽くせる時間と自信がある製作者の方であれば、ベストな手段だと思います。

続いて、「状態異常の使い分けを重要視させる」と言うのもあります。

これは「異常前提で選択肢が無いなら異常が無い方がマシ」に対する回答となります。

異常を掛けるorNotではなく、「どの異常を掛けるか」を悩みどころにしようと言う事です。

分かりやすいのは、ポケモンのような「一度に一種類の異常にしかならない」タイプのゲームです。

攻撃力を下げる異常を掛ければ強力な剣技を防げるが、魔法力を下げる異常を掛ければ全体攻撃魔法を防げる、あるいは毒異常で体力を早く削ったほうが手っ取り早い、と言うような状況になった場合、どれを選ぶ事が正解になるでしょうか?

防御力を上げる防具でカバーできないか、属性魔法耐性の防具でもいいのではないか、充分な攻撃力があるなら毒は要らないのではないか、等々様々な要因が関わってくるので、決して「状態異常を掛けるしか無い」の一言では終わらなくなります。

別に状態異常が一つしか効かないゲームでなくても、異常を掛ける手段を覚えっぱなしの汎用スキルではなく、装備アイテムの追加効果や習得数の上限があるスキルの一つにしてしまい、異常付与スキルをスロットの関係で選別しなければならない作りにする事でも同じ事が実現できます。

後は、「ボスが異常を回復してくる」なんてのもあります。

自分だって異常に掛かったらアイテムなり魔法なりで回復するのだから、別にボスがそうしたっておかしくありません。

ただし、ボスが異常回復行動に掛かりきりで他の行動をしてこないロック状態になったりするとマズいので(もちろん、一部のボスはそれで倒せると言うのは面白いと思います)、元から二回以上行動するボスが行動回数を1回だけ使って回復してくるとか、一定ターンごとの特殊行動のおまけで異常を回復してくる等の工夫も同時に必要になります。

他にも、「異常を与えられる回数を制限する」なんてのも面白いです。

例えばあるダンジョンでは、非売品の消費型アイテム「石化針」を1つ拾えるとします。

そのダンジョンのボスが三人組の山賊だった場合、「石化針」はどう使うべきでしょうか?

左の回復魔法を扱う山賊か、右の異常をバラまく山賊か、中央の強力な剣技を操る山賊か、あるいはここでは使わず今後の為に取っておくべきか。

なまじ自由に使えるから強くなり過ぎるのですから、何かしら制限があれば調整しやすくなります。

上記の例だと「石化針」はもったいなくて雑魚に使えない難点がありますが、廉価版でボスには効きにくい「睡眠針」なんかを用意すれば問題ありません。

消費型アイテム以外にも、1ターン中の使用回数が制限されたスキル等でも似たような事ができそうです。

拙作でやったパターン

私自身は状態異常が大好きで、ボスにも有効な方が好みです。

それなので「捨てるしかない」「すごい南」でも、やはりボスに異常が有効です。

各々違った方法で、自分なりに丁度良い「ボスに効く状態異常」を模索しています。

「捨てるしかない」の場合、ステータス画面に「異常無効」や「出血無効」と書いてない相手には100%異常が有効です。

ただし、異常そのものはある程度控え目な設計にしてある他、「裏目」が稀に起こり得ます。

味方が相手に与えられる異常は「拘束」「霊障」「出血」の三種で、順に「攻撃・防御力半減、剣技スキル使用禁止」「魔法力半減、魔法スキル使用禁止」「ターン終了時HPダメージ」になります。

いずれも相手の行動を完全に禁止してしまう事が無いので、掛けただけで完全には無力化できない作りです。

また、出血は味方が掛かった場合はHPの20%を失いますが、敵の場合は一律64ダメージで、減少量が均一ではありません。

充分に掛ける意義があり、かつ一発でゲームが終わらないラインを自分なりに探した結果の調整です。

前述した「ボスが異常を回復してくる」ですが、このゲームにはそれを取り入れてあります。

これにより、「2回行動するボスの行動を1回回復行動で潰す」事が可能なので、異常は極めて有用です。

ただし、敵によっては「剣技が封じられていれば魔法を、魔法も封じされていれば更に危険なスキルを選ぶ」と言うような行動パターンも用意してあります。

個人的に一番気に入っているのが、異常を与える手段がスキルの追加効果以外に、装備している武器によって得られる、通常攻撃の追加効果にもある事です。

普通は強力なスキルが集まるにつれ通常攻撃の有用性は下がっていきますが、武器の持つ異常付与効果を与える為の選択肢として、最後の最後まで通常攻撃が重要な選択肢の一つであり続けます。

「すごい南」の場合、通常攻撃の追加効果で付与できる点は同じですが、他は違ったアプローチをしています。

このゲームには力・知・奇の三属性が存在し、ほとんどのスキルがこの括りの中にあるのですが、基本の状態異常6種もまた3つの属性のどれかに属しています。

力属性の「出血(HP25%ダメージ)」「転倒(1ターン行動不能)」、知属性の「減物(一定ターン攻撃、防御減少)」「減術(一定ターン思考減少)」、奇属性の「混乱(ランダムターン全能力減少)」、「恐怖(ランダムターン行動不能)」が以上6種の内訳で、フレーバー的な意義もありますが、相手の属性を見る事で属性の三すくみからどの異常が有効かだいたい見当がつくようになっています。

例えば知属性の弱点は奇属性なので、混乱か恐怖が有効な場合が多いです。

転倒、恐怖、出血はボスに有効だと強烈過ぎるので、一部の変なボス以外には効かないようになっています。

(一部のボスには有効で、それを前提としている分、却って普通のボスより厄介になっているかも知れません)

が、他のものに関しては、元の「減物」「減術」「混乱」の代わりに、1ターンのみ有効な「軽度減物」「軽度減術」「軽度混乱」が100%発生するようにしてあります。

また、固定ダメージや異常付与のような「能力半減でも被害を抑えきれないスキル」を交えてくるので、簡単には全ての攻め手を止められないようになっています。

うまいこと前兆行動等から状態異常を掛けるべきタイミングを見計らったり、異常から回復した直後のターンに回復を合わせてフルパワーの攻撃から生還しやすくする等、考えるべき事があるようにしています。

そもそもの話ですが、「すごい南」はボスだけでなく雑魚戦もそれなりに厳し目の難易度に設定してあるので、ボスに効かない事が状態異常を用いない理由にはならなかったりします。

色々書いてきましたが、やっぱり私は状態異常が大好きなので、今後も異常を掛けたり掛けられたりするゲームを作っていくと思います。

しかし、それもやり過ぎるとストレスフルなプレイ感になってしまうのは重々承知しております。

その辺嫌だなあと感じた方がいらっしゃいましたら、遠慮せず文句を言ってもらえると助かります。

状態異常そのものを諦める事は無いと思いますが、どうにか快適と歯応えの丁度良い妥協点を探っていきたいと考えています。

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