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Twitterを眺めていると、ゲームの製作について色々な意見を発信している人がいます。
この前見かけたのは、RPGにおける属性に関する話でした。
その内容について反論があるわけではないのですが、自分なりに属性を重視したゲームをプレイしたり作ったりしている中で気付いた事があったので、このページに纏めて行こうと思います。

本ページには、前に書いた別の文字列と少々重なる部分もあります。
既に読んだ方は、適度に読み飛ばしてください。

属性の意義
属性は、何らかの必要性があるからこそ使われています。
1.展開の固定化を回避
「レベルを上げて物理で殴ればいい」なんて流行り言葉がありましたが、どんな時でも単一の攻略法でどうにかなる(あるいは否応なしに単一の攻略法を選ぶ事になる)ようになると、どうしたって飽きてしまいます。
敵に属性耐性や弱点を用意すれば、相性次第で最高の攻略法が変化するようになるでしょう。
2.フレーバー
どんな魔法も単に魔法であるより、炎魔法だったり氷魔法だったりする方が雰囲気が出ます。
ゾンビに光魔法を使うと威力が上がる方が、なんだか自然に感じます。
3.リドル要素
実はこの金属製ゴーレムは、中に人が入っているので炎で炙ると簡単に勝てる!
しかしその情報は、町の外れの嫌われ者の男しか知らない!
というような塩梅で、戦闘以外の場面での情報収集を重要にする事が出来ます。
4.何らかのシステムの一要素
プレスターンバトルのような、弱点を突く事をフィーチャーした戦闘システムが存在します。
各属性に、専用の特殊スキルがあると言うパターンもあります。

属性の意義に対する、属性以外のアプローチ
上記のように、属性の採用にはメリットがありますが、徒に要素を増やして複雑化させるよりも、他の手段を選んだ方がスマートに済む可能性もあります。
1.属性以外での、展開の固定化の回避
攻撃魔法も、対象が全体なのか単体なのか、消費が大きいか小さいか、待機時間があるかないか、その他諸々の要素で差別化出来ます。
必ずしも、属性がなければ単純さを解消できない訳ではありません。
2.属性以外での、フレーバー
単に説明文を長く取ったり、攻撃アニメーションを工夫するだけでも、プレイヤーに雰囲気を感じさせる事は出来るでしょう。
また、属性の枠に押し込める事に執心し過ぎて、却ってフレーバーを欠く事もあります。
例えば、大抵の動物は雷に当たれば死にますが、属性があるが故に無理にでも雷に強い敵を出さなければならなくなる事が起こりえます。
3.属性以外での、リドル要素
これは1と同様、他の意外な攻略法を用意すれば済みます。
また、システムとしての属性が存在していなくても、ハンマーを装備している時のみモグラに三倍ダメージを与える特殊処理を組んでしまっても構いません。
4.属性以外での、何らかのシステムの一要素
これについては無尽蔵に考えうるので説明を省きます。

カラーパイ
RPGの属性は、多くの場合「相性」と不可分なものになっています。
しかし、トレーディングカードゲーム(以下TCGと略す)における属性には、「〇〇属性には倍ダメージ!」のような相性システムは存在しない場合が多いです。
代わりに、属性ごとにカードの傾向に個性があり、その個性が結果的に相性を生み出しています。
そう言った属性ごとの個性は、最初のTCGであるマジック:ザ・ギャザリングにおいては「カラーパイ」と呼ばれています。
これはRPGにおいても、十分に応用が利く要素だと、自分は考えております。
例えば、「魚には電気が効くから雷属性を選ぶしかない」となるよりは、「魚の水中へ隠れる行動に対抗する為に、隠れる前に速攻で倒せる風属性を選ぼう」となる方が、主体的になれて楽しいと思います。

サイクル
TCGにおける「サイクル」は、特定のテーマに基づいた一連のカード群を指します。
RPGで言えば、「ファイガ、ブリザガ、サンダガ」のような、ほぼ同時期に覚えられる各属性の魔法はサイクルの一種と言えるでしょう。
ただし、RPGのそれは「ダメージも消費MPもおんなじ、違うのは属性だけ」な場合が多いのに対し、TCGであれば上記カラーパイに合わせて各々個性付けがなされています。

TCG最初のサイクルは「ブーンズ」と呼ばれる5色5種類のカードであり、白が3点回復、赤が3点ダメージ、緑が攻撃力&耐久力3点強化、黒が魔力3点発生、青が3枚ドロー(手札が3枚増える)と、それぞれ「3」ぶんの何かをする能力を持っていました。

ちなみにこれらは同じ「3」でも、それぞれの数字の重みがぜんぜん違いました。

白の3点回復は弱過ぎて使われず、逆に青の3枚ドローはあまりにも強過ぎてしまい、その青のカードである「Ancestral Recall」は、今では安くて一枚16万円もするようになりました。

ここまで極端なのは問題ですが、サイクル間にある程度優劣や汎用性の差があると、それが属性を選ぶ判断材料になります。
そう言う所はRPGでも見習うと面白そうな要素で、属性選択の楽しさを大きく高めてくれる事が期待できます。

耐性と弱点
RPGの属性相性は、耐性と弱点の組み合わせで実現される場合が多いです。
いずれも主に攻撃の威力に関わる要素で、被るところがあります。
例えば、四つの属性があるゲームで、「耐性1つの敵」と「弱点3つの敵」がいる場合、それはほとんど同じ意味になります。
であれば、耐性と弱点を両方採用せず片方だけ使った方がシンプルで良い気もしますし、0~200%ぐらいの振れ幅の「有効度」として丸め込んでしまっても良さそうです。
そのあたりを考えるうえで、「四属性のゲーム」での「耐性1つ」と「弱点1つ」の違いを考えてみると、どちらがそのゲームにあっているのか、本当に耐性と弱点両方が必要なのかが、見えてくると思います。
攻撃側の場合
耐性一つ
・正解が3つ、不正解が1つなので、選択肢が多い
・一つの属性に固執しても、四回に一回以外は問題なく突破できる(あるいは、できてしまう)
弱点一つ
・正解が1つ、不正解が3つなので、選択肢が一つしかない
・四回に三回は前と違う属性が正解になるので、高頻度で戦い方に変化が生じる
やられる側の場合
耐性1つ
・耐性を効果的に活かすには、常に最適な耐性を敵に合わせていく必要がある
・複数の属性攻撃をする敵がいる場合、どれを防いでどれを甘んじて受けるか選ぶ必要が出てくる
弱点1つ
・それほど弱点を突かれる頻度は高くないので、普段から相性を気にし続けなくても良い
・複数の属性攻撃をする敵がいる場合、全滅を避ける為に味方の弱点を散らすような場合が出てくる

拙作の場合の例(すごい南)
特に、カラーパイの考えを反映したものになっておりますが、耐性と弱点の重要性については十分に検討出来ていなかったように感じております。
というより、このゲームの反省から耐性と弱点の違いと重要性を考えるようになった感じです。
属性の種類
「力」「知」「奇」の三属性になります。
これらは世界観的に重要な意味を持っており、その辺を生かしで話を作れた事は成功だったと思います。
相性
力は知に弱く、知は奇に弱く、奇は力に弱い三すくみになっています。
有利属性の攻撃は不利属性に対し威力が上昇し、自身と同じ属性からの攻撃には耐性があります。
(例;力→奇は1.5倍、力→知は1.0倍、力→力は0.5倍)
これについては、相性面で有利な場合と不利な場合の落差が大きくなり過ぎているので、もう少しバランスを見直しても良かったように感じます。
また、もし世界観が許すのであれば、三属性を四属性に変え、「1.0倍」の組み合わせを増やすのも良かったと考えます。

スキル習得システムとの関連づけ

このゲームでは、属性毎に「スキルレベル」が存在し、この値を大きくすればするほど多くのスキルが使用可能になります。

スキルレベルは装備している象徴(武器)と、そのキャラクター自身の持つ属性から算出されます。

これによりキャラクターの戦闘中での個性付けをし、装備変更によりスキルのカスタマイズを可能にしています。

異常との関連付け

このゲームでは、状態異常にも属性があり、属性相性が有利な相手に対して成功率が高くなります。

力押しの力属性の異常は出血や転倒、知的な知属性の異常は能力を下げる減物や減術、いろいろやれる奇属性は能力現象の混乱と行動不能の恐怖と、異常の症状自体にも属性らしさを反映してあります。

カラーパイとサイクル

各属性のスキルは、各々属性の個性にあった傾向を持っています。

この傾向は、ゲーム性以外に世界観の要請も含めて考えてみました。

力属性:物理攻撃、攻撃や防御に影響、単純

知属性:思考攻撃、思考力に影響、便利

奇属性:基本は思考攻撃、支離滅裂

スキルレベルは1刻みでスキルが設定されており、スキルレベル0なら0つ、9なら9つの対応する属性のスキルが使えるようになります。

それら27個のスキルの内容や、同レベル帯のスキルとの相対的な能力を決める上で、カラーパイやサイクルの考え方が参考になりました。

例えば、スキルレベル8のスキルはこうなっています。

力:クーゲル 単体に強力な物理ダメージと即死

知:シェック 全体に強力な思考ダメージと知属性状態異常

奇:ドゥルヒアイナンダ 単体に強力な思考ダメージと全属性異常とHP吸収

全て攻撃スキルですが、力属性だけは物理攻撃です。

また、単純さを反映して単体攻撃になっています。

知属性は通常の全体攻撃スキルの中では最大級のものです。

状態異常付与も含めて、無難に強いスキルになっています。

そして奇属性は、自分と属性の違う力と知を含めた全属性の異常を与える能力を持ちます。

おまけに他のスキルには無いHP吸収の能力がついていて、いかにも奇妙な感じです。

どれも攻撃スキルですが、うまいぐあいに属性毎に差別化でき、どれが一番有用なのか場面によって変わるようにできたんじゃないかと思います。

この記事を書いたのは、たまたま属性が話題になっていたからと言うのもありますが、実は次に作るゲームのスキル習得ギミックについて悩んでいた事が理由だったりします。

そこそこ属性が重要なストーリーなので、すごい南同様にスキルを属性に依存する形で習得するようにしたかったのですが、どうにも良い仕組みを思いつきませんでした。

そう言うわけで、改めて属性について考え直してみようと思って書いた次第です。

属性は世界観とゲーム性、両方に絡む重要な要素です。

できるだけ不整合を起こさないよう、しっかり計算したうえで活用したいものです。

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