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捨てるしかない」の戦闘には、ツクール標準のターン制の仕組みに加え、「AP」が存在します。

既にプレイしてくださった方であればご存知だと思いますが、改めて仕組みについて箇条書きすると、

・毎ターン開始時、各キャラクターは各々の「AP回復量」分、MPに相当するAPが回復する(初期値は0)

・各スキルは、それぞれ要求する一定以上のAPが無いと使用できない

 (例:スキル「シュレッド」はAPが18以上ある時のみ使用できる)

・スキルは使用に際し、「何も消費しないもの」「APを消費するもの」「HPを消費するもの」の三種がある

 (例:「シュレッド」はAPを消費しないが、「ヂス・ホースト」はAPを消費し、「深呪剣」はHPを消費する)

・戦闘不能になるとAPを50失う、APが50以上ある時に戦闘不能になると、HP50%で自動復活する

・敵の場合、攻撃を食らったターンのAP回復量は半分になる

と言うようになっています。

「毎ターン、MPやその他ゲージが上昇するターン制戦闘」と言うのは、既にいくつも前例が存在しています。

この「AP制」もまた、それらの仕組みの派生系にあたります。

ただ、自分がプレイしてきたり、作ってきた「MP回復制」にはいくつか不満点があったので、「AP制」ではそう言った部分に自分なりの改善を加えてあります。

本記事では、それについて色々と書き連ねていこうと思います。

そもそもAPって何なのか

本ゲームにおけるAPは、Action Point、つまりは「行動値」の略語になります。

キャラクターの行動を左右する値なのでこのように命名してありますが、それ以上に「MPではない」と言う事を示す点が重要でした。

味方だけでなく敵の行動もAPで決定される為、相手が次に何をしてくるのか予測しながらの行動選びが求められます。

また、魔法に限らず、剣技や復活のような様々なアクションで要求されます。

APの自動回復について

ゲームによっては、APに相当する数値が自動で回復するのではなく、例えば「チャージ」や「集中」と言った名前の、回復のためのスキルによって行われるものもあります。

そう言った仕組みでは、必要な時にチャージで動けなくならないようポイントの使用配分について細心の注意を払う必要があり、うまく設計すれば極めて戦略的な戦いを要求されるゲームを作る事が出来ます。

反面、戦闘中のターンの一定割合がチャージに費やされ、何もしない「空白ターン」が存在してしまいます。

強力なスキルを撃つ為にチャージを連打しなければならない場合、それはより顕著になります。

APが自動回復する場合、そのような「空白ターン」はあまり発生しなくなるので、より戦闘のテンポが良くなると考え、現行の仕組みにする事にしました。

このゲームでもAPを回復する為のアイテムは存在しますが、使用回数に制限を設け、そればっかりにならないようにしてあります。

ちなみに防御コマンドが存在せず「行動のパス」に置き換えられているのも、「最強のスキルを撃つのに必要なAPが貯まるまで防御コマンドを連打する」戦略を使えないようにし、「防御」と言う「空白ターン」が生じないようにする為の処置になります。

(ツクール2000で敵の二連行動を実現する上では内部処理の関係で防御の廃止が必要だったと言うのもありますが)

これにより、APが貯まるまでの間もプレイヤーは能動的なアクションを選んでいく必要性に迫られます。

APを消費しないスキルについて

このゲームでは、APを消費しないスキルや、APの代わりにHPを消費するスキルが存在します。

これもまた、ゲームのテンポを高める為の施策の一つになります。

APを消費するスキルしかない場合、最強の攻撃手段を放っては、再度APが貯まるまで立ちん坊するゲーム展開が頻発してしまいます。

そこでAPを消費しないスキルを用意する事で、「再度APが貯まるまで立ちん坊」する状況を低減するようにしてみました。

APを消費するスキル自体は残っていますが、他の攻撃手段との差別化を図り、連打する以外のプランが魅力的な形にしてみました。

……が、少々強くし過ぎた感じがしなくもないので、もう少し消費APを高めにして良かった気もします。

余談ですが、ツクール2000の標準戦闘システム上でAP非消費スキルやHP消費スキルを実現する為に、全てのAP非消費スキルは偶数、HP消費スキルは奇数、AP消費スキルは5の倍数のAPを要求するようにしてあります。

これは本来MPを消費するスキルしか作れないツクールの仕組みの中で、無理矢理各スキルを区別して内部処理でAPの使用を実現する為に為に必要だった事になります。

各キャラクターが消費したMPが偶数(AP非消費スキル)ならば減ったMPを回復、消費を帳消しにし±0とし、奇数(HP消費スキル)ならば同様に消費を帳消しした後に消費MPx2%のHPを減らし、そして5の倍数(AP消費スキル)であれば特に何もせずAPを消費したままにするようになっています。

戦闘不能からの自動復活について

APを消費しないスキルを用意したのは良かったのですが、これはこれで問題がありました。

AP消費スキルを使用しない戦略を取った場合、APがカンストするまで回復し続ける事になり、有り余ったAPが無駄になってしまうのです。

それならそれでAP消費スキルを交えて戦えば良い話ではありますが、それ以外にも何か特典を用意したいと考えました。

それで実装したのが、APが一定以上あれば自動復活する仕組みです。

元々戦闘不能のペナルティとしてAPが0になり、再度貯め直さなければならない→極力死なないように戦った方がベター、と言う仕組みを用意していたのですが、これはこれでせっかくたくさん貯めたAPが集中攻撃を食らった瞬間に一気に水の泡になり、ちょっとした運の悪さから戦略が瓦解するリスクが有りました。

これについても、自動復活によって同時に解消できたように思います。

また、自動復活がある分だけ敵の攻撃手段をエグめに設定できるようになったので、自分が個人的に好む、ハードな戦闘を作る上でもプラスに働きました。

ちなみに、本来ツクール2000では全員が戦闘不能になった瞬間ゲームオーバーになってしまうのですが、ツクール2000のエディタの状態異常欄のコピー・ペースト機能に関するおかしな挙動を利用し、戦闘不能状態の設定を変更する事で、全員が一時的に戦闘不能になっても、APによる復活が可能な状況であればゲームオーバーにならないようにしてあります。

攻撃を食らった敵のAP回復量減少について

これも防御コマンドを削った事と同様、プレイヤーの能動的な行動を促す為の仕組みです。

攻撃力が貧弱なキャラクターでも、敵に1ダメージでも与えれば行動を遅滞させる仕事を担う事が出来ます。

「防御」よりは「攻撃」に走る必要があり、常に前のめりのプレイスタイルが求められるようになります。

また、全体攻撃が単体攻撃に比べ、一度に全ての敵を足止めできる点で強力になるのもポイントです。

……ちょっと強力過ぎたかも知れませんが。

長々と語ってきましたが、自分なりに気になっていた「MP回復制」の難点を「AP制」では色々と改善できたので、捨てるしかないの戦闘は個人的に満足の行くものが仕上がったと考えています。

公開してはいませんが、「MP回復制」のゲームは今まで何回か作っていたので、その経験値がうまく働いてくれました。

と言っても、捨てるしかないの「AP制」には、まだまだ改善点があります。

上述していない部分では、例えば「アイテムを捨てなければならない→習得できるスキル数の上限があるので、序盤用の低APスキルと終盤用の高APスキルを使い分けるような戦略が取りにくい」等が不完全だったと考えています。

また、ゲーム自体が短いのもあり、「AP制」にはまだまだ未使用の「デザイン空間(カードゲーム「MtG」の開発者が使う用語。ある仕組みに対し、どれだけ色々なバリエーションのデザインを行う余地があるかを示す。例えば表裏でイラストと能力が異なる「変身」カードは、「人」と「狼」の姿を持つ狼男のカードや、「未開地を探検する為の剣」と「ついに見つけた秘境」の姿を持つ探検の様子を再現したカードのような、様々な表現が可能な広いデザイン空間を持っている)」が残っているように思えます。

自分としてはまだまだ「AP制」には改善だけでなく進化の余地もあると思っているので、また次のゲームではより進化した「AP制」をお見せ出来ればいいなあと考えています。

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